『デビューボの泉』第二回 : 女性専用車両脳の恐怖!

 あなたに向けられた憎しみを微笑みへと変えてくれる『デビューボの泉』へようこそ。この連載では、かつてフェミニストの発言を脱文脈的に取り上げて価値付けしたことのある人たちの文章を主に扱っていきたいと思います。さて、今回取り上げるのはジャーナリストの千葉展正というヒトです。名前自体はほとんど知られてないと思いますが、「反フェミニズムサイト」というサイトを運営しつつ、『男と女の戦争』という本を書いたり、「男女平等バカ」や「SAPIO」などのムック、雑誌などにも反フェミ系の記事を寄稿していらっしゃったりして、目に付く機会はそこそこ多いかも。

 直接彼の文章を読んだことのない人でも、斎藤美奈子さんが『物は言いよう』の中で次のように指摘していたことを覚えている人は多いのでは。

 土俵に上がりたいフェミニスト政治家たちにいいアイデアを提供したい。この女相撲を復活させるのだ。そして御自身たちがフンドシをつけて土俵に上がるのだ。平成不況の暗雲を吹き払ふために女性政治家が奉納土俵入りを行ふ。なんていいアイデアだらう。(千葉展正『男と女の戦争』展転社、二〇〇四)

 本人は得意満面で打っちゃりを決めたつもりだろうが、すでに土俵が割れている。まず、力士が締めているのは「フンドシ」ではなく「マワシ」である。さらに、この方式でいくなら、杯の授与者全員に「フンドシ」をつけていただくのが筋である。土俵上で「感動した!」と叫んだ小泉首相にも「フンドシ」で奉納土俵入りを行っていただくべきだったのではないか。

斎藤美奈子『物は言いよう』平凡社、二〇〇四より

 千葉展正さんは共同通信経済部の元記者さん。経済部の元記者さんによれば、女相撲を復活させると「平成不況の暗雲を吹き払ふ」ことができるそうです。それはすごい、さっそくみんなで経団連にメールだ! ちなみに女相撲は現在でも残っているけれど、それは気のせいなので無視しましょう。

 もし私が女子大の経営者だつたら、フェミニズム教育なんかただちにやめて、建学の精神に立ち帰る。

 女子大の建学の精神とはなにか? 良妻賢母教育である。

 良妻賢母教育といふと古くさく聞こえるかもしれないが、これを封建的な徳目として誤解してもらつたら困る。良妻賢母教育とは簡単にいふと、女性の全人格的な教育のことだ。

 良妻賢母教育の中心は当然、育児だ。学校では育児を徹底的に教える。幼稚園教諭や保母を育成するのではなく、自分の子友を育てる知識と技術を教へるのだ。

かうした教育を受けた○○女子大学の卒業生は、結婚して子供を産むと、誰もが立派に子供を育てるやうになる。やがて、○○女子大学の卒業生は子育てがうまいといふ評判がたつ。○○女子大学の卒業生の卒業生は嫁に引き手あまたとなる。企業からも求人が殺到する。

 ○○女子大学の卒業生は、高度な家政学と子育ての経験を生かして、三十代、四十代になっても様々な仕事につくことができる。なにしろこの国には、家事と子育てのプロはほとんど存在しないのだから。

 大学の生き残り策としてもいいアイデアだと思ふ。

千葉展正『男と女の戦争』(p.55〜56、展転社、2004)より

 「女性の全人格的な教育」という「良妻賢母教育」を、どうして「封建的な徳目」と誤解してはいけない理由だけはよくわかりませんでしたが、共同通信経済部の元記者さんがおっしゃっているのだから、このプランは皮算用ではないはずです。ニーズもたぶんあるので、学生もたぶん殺到するはず。さっそくみんなで経営難の女子大の学長にメールだ! 

 大妻女子大学の校訓は、「恥を知れ」ださうだ。

 恥を知れ。いい言葉だ。女子教育の本質を一言で表現してゐる。

 明治四十一年に大妻タカコが創立した大妻女子大学は、良き女子教育の伝統を堅持する数少ない女子大学である。この大学の学生には電車の中で平然と化粧する女性はゐないにちがひない。それかあらぬか、大妻女子大学の卒業生の就職率はほぼ一〇〇パーセントといふことだ。

千葉展正『男と女の戦争』(p.56、展転社、2004)より

 私は自分の大学の校訓なんて知りませんでしたが、大妻女子大学の学生の場合は校訓をしっかりインストールしているので、電車内で化粧する女性もたぶんいないし、いたとしてもたぶんこっそりやってるはずです。ちなみに大妻女子大学はの就職率は、就職希望した人の就職率は93.8%、全学生のうち就職した人の割合は79.8%で割とフツーだけれど、大胆に四捨五入したら100%だからOK!

 この本では他にも、ジャーナリストらしく常人では思いつきもしない視点がキラリと光っています。

 《厚底を 女性の地位に 履かせたい》

 この川柳は、数年前厚底靴がブームになつた時に思ひついたものだらう。

厚底サンダルで車を運転していた女が人をひき殺してからといふもの、厚底ブームはすっかり下火になつた。まつたく、女に厚底をはかせるとロクなことがない!

千葉展正『男と女の戦争』(p.41、展転社、2004)より

 ジャーナリストの千葉さんによれば、厚底サンダルブームは事故がきっかけで下火になったそうです。ということは、ギャルはすんごく道徳的なんですね。なるほど。ジャーナリズムの勉強にもなります。

 女子大のフェミニズム講座。女の教授は学生に語りかける。

 「みなさんがこれまで教へられてきたのは男性社会の価値観や固定観念です。ジェンダーフリーをともに学びませう。それが女子大で学ぶ意義です」

 彼女は授業の中で、

 「夫を主人と呼んではいけない」

 「専業主婦は消え去るべきである」

 とヒステリックに叫び、最後は

 「男性による女性支配を打破しなければならない」

 という文句で授業を終へる。

 女子学生たちは、

 「なんでもかんでも男が悪いなんて、なんかヘンね」

 と内心思ってゐる。でも、反論するとフェミタリアン教授がヒステリーを起こすので黙ってゐる。

千葉展正『男と女の戦争』(p.53〜54、展転社、2004)より

 ベテランジャーナリストの手にかかれば、取材などしなくても想像で記事が書けるのです。立派なジャーナリストになるためには、取材費を浮かす方法も考えなくてはいけません。ちなみに、「正仮名遣い」にこだわっているように、千葉さんは美しい日本語にこだわります。ですから、

 (ゼロ歳児からのジェンダーフリー教育は)文字通り、赤ん坊のうちからジェンダーフリーの精神を身につけようといふモルモット思想にもとづく変態的な試みで、文科省は全国の幼稚園や民間団体などに委嘱して幼稚園児にジェンダーフリー教育の実験を施してきた。

千葉展正『男と女の戦争』(p.142、展転社、2004)より

 とあるように、「モルモット思想」という日本語は聞いたこともなく、ググっても1件も出てきませんでしたが、なんとなく美しいのでOKです。たぶん、江戸時代にも使われていたはずです。

 さて、それではみなさんお待ちかね。千葉さんのもっともデビューボな発言をご紹介しましょう。

 女性専用車両を運行する意味とはなにかといふと「男性敵対思想の宣伝」。これである。

 電鉄会社は「女性を痴漢から守るために女性専用車両を導入しました」なんて言ってるが、あれはウソ。

 あまり知られてゐない事実だが、女性専用車両のドデッパラには、人間に見えるか見えないやうな薄いペイントで「男=ワル」と大書してあるのだ。そして電車がホームに入ってくるたびに、利用客の脳裏にはテレビのサブリミナル効果のやうに「男=ワル」のイメージが刷り込まれる仕掛けになってゐる。

 (…)「女性専用車両」による男=ワルといふ観念の刷り込みが効いてゐるから、痴漢デッチあげによるユスリ・タカリは成功する。

 男性敵対思想に冒されてゐるのは女ばかりではない。「痴漢」と聞いただけで条件反射的に「犯人」を取り押さえてしまふ男たちも同じ。彼らは男同士の車内暴力には見て見ぬふりをするくせに、不思議に「痴漢」だけは取り押さえる。女性専用車両サブリミナル効果は男にも及んでゐるのだ。

千葉展正『男と女の戦争』(p.37〜38、展転社、2004)より

 こ、これは恐ろしい。いますぐみんなでJRに抗議の電話だ! もしJRの中の人に「そんなことありえません」といわれても、それは革命をたくらむ左翼とフェミニスト隠蔽工作ですからひるんではいけません。また、できる限り多くの人にも教えてあげましょう。もし「うっそだー」という人がいても、その人は左翼とフェミニストに洗脳されているので救ってあげましょう。その際は、この本を読ませてあげるといいと思いますよ。

 というわけで千葉さんには90デビューボ進呈したいと思います。おめでとうございまーす。

 さて、明日水曜日は本書よりキーワードをまた一つ紹介したいと思います。しかも話題の『ジェンダーフリー』。正しく理解して、みんなで同室で着替えるぞ!(ウソ)