『デビューボの泉』第三回 : そして伝説へ・・・
あなたに向けられた憎しみを微笑みへと変えてくれる『デビューボの泉』へようこそ。今回取り上げるのは、「「新しい歴史教科書を作る会」会長&名誉会長コンビが出した「ジェンダーフリー・バッシング本」の面白さ」というエントリーでご紹介したことのもある、西尾幹二・八木秀次『新・国民の油断』です。残念ながら当時と違ってお二人はもう会長でも名誉会長でもありませんが(なんでだろう?)、他にもお二人のためになる発言はたくさんあったので、そのうちいくつかをご紹介させていただきたいと思います。
以前、西尾先生の次のような発言をご紹介しました。
(西尾)これ(話を聞かない男、地図が読めない女)を見て、「ああ、そうだなあ」と思い当たらない夫婦はいないと思いますよ。私はこれを細かく分析して、私がバカだと言われたとき、「これは私が馬鹿だからではない。男と女の違いからくるものなんだ」と家内の前で例証しようと思った本です。
なぜ西尾先生はわざわざこんなことをおっしゃるのか。じつは、次のような理由があったのです。
(西尾)(…次のようなやり取りを)年中やっているんです。バターは冷蔵庫の一定のところにあるからあまり間違えない品物ですが、他のものは探し出せません。「なんで分からないの」と家内は怒っているわけですよ。そして私のことを馬鹿だと思っているんです。
なるほど。冷蔵庫の中身を探し出せないのは(そしておそらく一定のところにあるものもたまには間違えていそうなのは)自分のせいじゃないやい、脳のせいなんだい、と言いたい理由があったようです。私たちの常識ではついつい、冷蔵庫の中身の場所を知っているのは買い物やら収納やらを女性が担当していることも関係しているんじゃないかと考えてしまいそうですが、本当は脳のせいなんです。だから西尾先生を責めないで、西尾先生の脳を責めましょう。…あれ?
こういう脳の性差などを無視するフェミニズムはケシカランわけですが、そんな人はいまやあちこちに潜んでいるので注意が必要です。なにせ西尾先生が次のようにおっしゃっています。
(西尾)ジェンダーフリーは、そのシンボリックな意味を持っていて、歴史教科書問題の次に彼らがターゲットとし始めた、驚くべき国家破壊運動だと思います。(…)革命といっても暴力革命ではないのです。別の形式の革命なんです。(…)暴力革命を「赤い革命」と呼ぶならば、こっちは「白い革命」と名づける人もいます。
(西尾)こういう一部の勢力――私に言わせると、「一部の勢力」というのは、変態者のグループだと思っています。変態者と言うのは性的変態者ですよ。
(西尾)最終的には男にスカートを穿かせる運動なんだそうですよ。読者の皆さん、性的変体者グループの指導に煽られて、一種の全体主義的ファシズムが忍び寄っているんだということです、これは、まさにファシズムだ、ということをみんな気がついてほしいのです。ソフト・ファシズムなんです、と声を大にしておっしゃってください。
(西尾)要するに、彼らはヒットラーなんだ、ということをよく知らなければなりません。知らない間に起こることが怖いわけです。全体主義社会、日本がすでにソフト・ファシズムの社会に入っているということを、くりかえしますが、強く申し上げておきたいと思います。
(西尾)やはり性的変態者の奇妙な運動であって、みんなが気がつかないうちにどんどん進行しているのですね。だから「国民の油断」なんです。ジェンダーばかりを研究する機関を作るなどというのは、“性的変態者大学”と言っていいでしょうね。
(西尾)何度も言いますが、これは性的変態者たちのソフト・ファシズムなんです。本当に、いまのうちに排除しなければなりません。ナチスも最初は小さな集団だったのが、だんだん巨大化したのですから。
うっそだー、なんて思ってはいけません。気づいていないだけです。目覚めてください!「ジェンダーフリーバッシングは、そのシンボリックな意味を持っていて、歴史教科書問題の次に西尾さんたちがターゲットとし始めた、驚くべき国家破壊運動」だなんて思ってはいけません。もちろん、このようなリアリティは八木さんも共有しております。
(八木)ここで言う「上野千鶴子」は一つの象徴です。数多くの「上野千鶴子」が国や地方の審議会に入り込み、政策決定の場で発言権を持ってしまっています。
八木さんのリアリティでは、フェミニスト代表である上野千鶴子は『マトリックス』のエージェントスミスであるかのよう。なるほど、だから「早稲田大学の講演会のビラ」では西尾先生が救世主ネオとして描かれていたわけですね! ビラを見る限り、どちらかというとモーフィアスに近そうですが。髪型が。
こういう無意識の「ホワイト革命」はCMなどにも潜んでいるので注意しなくてはなりません。
(西尾)P&Gの柔軟剤入り「ホールド」は、全部、荒くれ男のような男性が洗濯している設定でしょう。女性も子供も出てきません。これは役割分担を決めてはいけないということから来るのでしょう。
西尾先生、これは少し違うと思われます。白濁とした液体を用いて屈強な男たちの服を一人のヤサ男が洗濯しているという設定、そして「気持ちいい!」(攻め)「はい!」(受け)のキメ台詞…あれはきっと特殊なセカンドターゲット(乙女)を意識したCMで基本的にはギャグかと思われます。それをうすうす感じていたからこそ、西尾先生も「ボールド」という洗剤の名前を「ホールド(抱きしめる)」といい間違えたのかもしれません。洗剤だけに、潜在意識のあらわれです。さぶっ。
(八木)日本コカ・コーラボトリングの缶コーヒー「ジョージア」は、「つぎいってみよー! ジョージア」がキャッチフレーズで、藤原紀香さんがヘルメットをかぶって建設現場作業員の格好をして出てきますね。あれも思想的な背景を感じますね。それから佐藤江梨子さんが駅員の格好をして満員電車に乗客を詰め込んでいるシーンもあります。旅客整理係、いわゆる「押し屋」ですが、あれは従来、男の役割ですから、あえて女がするというのもその傾向なのかな、と思います。加藤あいさんも男の背広を着てサラリーマン姿ですし。
(西尾)間違いないですね。三つでも四つでも実際のCMの話を聞くと、みんなの記憶がよみがえって、いつの間にか自分たちが無意識に支配されていることに気がつくでしょうね。これはヒットラーがやったやり方なんですよ。ヒットラーは映画や広告など無意識のうちに浸透させる戦術を使ったのです。(…)要するに、彼らはヒットラーなんだ、ということをよく知らなければなりません。
このCMは放映と平行して「あなたが選ぶ!つぎいってみよー!ジョージア衣装大投票」という企画があったので、たぶんコスプレを狙っていたのではないかと思いますが、それにしても八木先生が意外とアイドルに詳しいことには驚きました。しかし、おそらくそれもヒットラーの仕業なので気をつけましょう。間違いないですね。
(西尾)普通の日本人は、「ジェンダーフリー」と聞いても「それ何?」と言うだけだし、「過激な性教育」の話をしても「一部の日本人が馬鹿なことを言っているだけじゃないの?」と本気にしない。
あとがきより
すみません西尾先生。本書を読み終わった後も「一部の日本人が馬鹿なことを言っているだけじゃないの?」と思ってしまい、本気にすることができませんでした。しかし、大の大人が一生懸命フェミニストの陰謀を叫んでいる必死ぶりに敬意を表し(ついでにそれを各議員に無料で配布する自民党の意気込みにも敬意を表し)、『新・国民の油断』には95デビューボ進呈したいと思います。おめでとうございまーす。
さて、明日水曜日はキーワードの日。今回取り上げるのは『新自由主義/ネオリベラリズム』です。このキーワードはかなり気合を入れてつくった自信作なので、ぜひお楽しみに。読者も気合いを入れて、めざせ第二のアニマル浜口!(ウソ)