『バックラッシュ!』プレゼント企画、ファイナルツー

 こんにちは、みなさま。『バックラッシュ!』をプレゼントするというこの企画もいよいよ終わりが近づいてきましたが、「まだあたってないぞ!」という皆様にも来週最後のチャンスがあります。
 今週幸運にも当選なさったのは yhlee さんです。早速よろこびの声が届いています。

 読みたいがね! と叫んだきり、企画にもとくに参加していなかったので、当選のお知らせをいただき、喜ぶと同時に、恐縮しております。
 わたしって、いままでフェミニズムについてなんか言ってたかしらん、と、検索してみると、もう1年以上も自分のブログで触れていなかったのに気づきました。いいお題をいただいたと思って、心して読ませてもらいます。
 どうもありがとうございました

 おめでとうございます!
 プレゼント企画ですが、最後の一冊がまだ残っております。すでに1刷を持っている人も、誤植を大幅に削減した(当社比)2刷を狙ってみたりするのはどうでしょうか。どんどん応募リンクして、「バックラッシュ」で検索したら Google ランキング1位になるようにしよう!(ウソ)

『バックラッシュ!』から考えるフェミニズムの行方 featuring 斉藤正美さん・山口智美さん

 こんにちは、みなさま。今日は斉藤正美さん、山口智美さんをお招きして先日行ったチャットを掲載します。山口さんは『バックラッシュ!』執筆者のお一人で、本書では「『ジェンダーフリー』論争とフェミニズム運動の失われた10年」をお書きいただいております。斉藤さんはその山口さんと一緒にサイト「ジェンダーフリーとフェミズム」を運営したり、ブログで丁寧な議論を展開されいる方です。
 それでははりきってどうぞ。

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『ポップ×フェミ』第7回 : 性労働者コンファレンス@ラスヴェガス報告

 こんにちは、みなさま。先週 macska はラスヴェガスで開催された Re-visioning Prostitution Policy というコンファレンスに参加してきました。表題の通り売買春に関する4日間に渡る大会なのですが、性労働者と活動家、研究者とソーシャルワーカー(これらのアイデンティティは部分的に重複する)が集まり、性病感染防止のためのアウトリーチや合法化・非犯罪化それぞれの長所と短所といったお決まりの議論にとどまらず、広く性労働者の権利擁護に関心のある人が集まりさまざまな議論を繰り広げた画期的なイベントでした。またしてもこれが「ポップ」なのかどうか激しく怪しいですが、今回はそのレポートをお届けします。
 と書き出してはみたものの、わたしはもともとこのコンファレンスには参加する気はなかったのね。というのも、こんな集会を開いても恵まれた環境で性労働をした経験があり今では本なんか出版してちょっとした有名人になった人ばかりが集まるに決まっているもの。でも複数の人から立て続けに「あなたにも来て欲しい」と言われ、旅行費用も出してくれるみたいな話になったから、「おかしな話になったら文句言ってやろう」くらいのつもりで参加した。
 恵まれた環境で性労働をした経験がある「ミニ有名人」が問題なのは、かれらが自信を持って語る「性労働」体験が一般の性労働者の大半とは段違いであることだ。例えばこのコンファレンスでも中心的な役割を果たしていたある「ミニ有名人」は、「性労働って仕事をしながらエクスタシーが経験できる素晴らしいお仕事♪」みたいに言ったりするので、たまらず「あなたは良い経験をしたかもしれないけれど、性労働一般についてそのように言わないでくれ」と抗議したことがある。
 では「反売買春」を主張する側の論者ならば底辺の性労働者の生の体験を知っているかというとそうでもなく、例えば昨年亡くなった著名な「反売買春」派フェミニストは、大学卒業後に親のお金でヨーロッパを見物旅行中、気を許した他のアメリカ人旅行者に騙されて持ち金を全部盗まれて、帰国するためのお金を売春して稼いだことがきっかけで反売買春に目覚めちゃったような人だったりする。要するに賛成派も反対派も有名人は中流階級以上の出身者で、性労働を必要以上に美化したり貶めたりするだけ。「いまいちパッとしない選択肢の中でかろうじてもっともマシな選択」として性労働に踏み出す底辺の性労働者のリアリティを分かっていない。
 もちろん、そんな状況の性労働者はこんなコンファレンスに来たりしない。主催者は「経済的に参加が困難な人には参加できるように金銭的な支援を準備した」と言うけれど、4日間も仕事を離れて旅行するだけでも負担なんだよ。というか、そもそもこのコンファレンスをわたしが知ったのは電子メールとウェブサイトのおかげなんだけれど、ストリートで働いている売春者たちはどうやってその「金銭的支援」の存在を知るというのか。それを指摘されると、「わたしたちは確かに中流階級性労働者だから、底辺の性労働者の問題はかれら自身に語ってもらおう」という、これまた中流階級的な良識というかお利口さが気に食わない。中流階級性労働者が底辺の性労働者を代弁することなんてできないけれど、かれら自身が声を挙げられないのを知りつつ何もせずに「かれら自身が語る」のを待つのだって問題なんだよ。
 そういえばコンファレンス中のある夕方、参加者の中から有志をつのり、性労働者らしく派手でセクシーな衣装を着て「売春を非犯罪化せよ」という趣旨のデモをやったらしいのだけれど、コンファレンスが終わってかれらがみな帰途についたあとでメンツを潰された地元警察がラスヴェガス性労働者たちに復讐する危険は考えたのか。一部で誤解があると思うのだけれど、米国ネヴァダ州で売買春が合法なのは政府によって徹底的に管理された売春宿におけるものだけで、しかもそれは大都市から離れた一部地域だけに過ぎない。売春宿を認めるくらいだから売買春に対してオープンなのだろうと考えるのは間違いで、民間業者による売春宿が合法ビジネスとして成り立つからこそ業者と癒着した政治家や警察はなおさら売春宿に属さない売春者を厳しく取り締まっている。
 前置きが長くなったけれど、わたしが性労働者運動にいい加減うんざりきているのは、「性労働者」とひとまとめにされる集団の中の格差があまりにも大きすぎるのに、そのことにセンシティヴになろうという様子がほとんどないこと。底辺労働者の存在をまったく無視するのも、かれらが声を上げないのを承知で「かれら自身の声を尊重しよう」というのも、どちらもこの問題にきちんと向き合っているとは言い難い。「売買春を非犯罪化しよう」「売春者に対する偏見をなくそう」という、ほとんど反対のしようがないような主張でさえ、急激に実施されると「犯罪だからこそ」「偏見を受けているからこそ」成り立っていた市場水準が一気に暴落し、これまで売買春によって家族を養っていた人たちの生活を破壊することだってありうる。そうした急激な変化によって最も多くを失う危険のある当事者の参加を欠いたまま、それでもかれらにフェアな運動のやり方を考えなければいけない。そうした倫理的な覚悟がもうちょっと共有されていると良いのだけれど。
 話がどんどん逸れているので、コンファレンスの話に戻す。コンファレンスの良かったところは、北米各地の様々なところで性労働者の権利と生存のために行動を起こしている人たち(プラス国外からの参加数名)と会えたこと。わたしが良く知る西海岸の性労働者当事者団体や支援団体(SWOP USACOYOTEESPU、その他)に加え、ワシントンDCの HIPSミネアポリスの STORM、マサチューセッツ州スプリングフィールドArise for Social Justice など、これまでメールでしかやり取りがなかった人たちと実際に会い、さまざまな知識や智慧を交換できたのは良かった。特に HIPS のストリートアウトリーチに感激。やっぱりポートランドは遅れているよ。
 今回のコンファレンスで一番異色だったのは、上で少しだけ書いた合法売春宿の経営陣が3人並んだパネルディスカッション。どうせなら経営者ではなく実際に売春宿で働いている労働者の話が聞きたかったけれども、売春宿の経営者の話を聞ける機会なんてそんなにないし、考えてみればかなり貴重な経験かも。もちろんかれらの発言は「1年で40万ドル(約4700万円)稼いだ女の子(とかれらは大人の女性を呼ぶ)もいる」などウソ(ではないにせよ、ほとんどあり得ないケース)ばかりだけれど、そういう種類の嘘ならわたしも予測していた。しかし、かれらがまるで慈善事業をやっているかのように「全ては女の子のため」という発言を繰り返すことには驚かされた。たとえばかれらは「自分たちは,女の子たちが合法的に売春できるために多大な努力をしている」と言うけれど、質疑応答で「売春宿以外における自由売春も支持するのか」と聞かれると、「売春宿は女の子たちに安全を提供している、自由売春は彼女たちに危険だから支持できない」と言う。正直に「自由売春は売春宿の商売敵だから支持できない」と言えば、まだ対話の相手として意義を見いだせたのになぁ。そんな経営者が珍しく本音を漏らしたのは、「売買春の自由を主張するリバタリアン党を支持しますか」という質問に「わたしは共和党員だ」と答えたとき。ちなみに、残念ながらかれら自身の年収については教えてくれなかった。
 続いて、自虐趣味で参加した「性労働を研究の対象とする学者たち」のグループ。やっぱり最悪。ある経済学者は「性労働者の仕事への満足度」を調べていて、その手法がこのコンファレンス会場でのアンケート。そんな偏ったサンプルでとった統計に何の意味があるのか全く不明。わたしが「研究者は性労働者を研究の対象とするだけでなく、性労働者団体とパートナーシップを組んでかれらが必要としている情報を調査すべきだ」と言ったら、「しかし社会科学の研究は中立かつ客観的でなければ…」と言う社会学者。客観性というのはメソドロジーとリサーチデザインで担保するべきで、性労働者団体とパートナーを組まなければ良いというわけじゃないでしょうが。「実はある性労働者団体の協力で論文を出版したのだが、学術誌が著作権を握っているためにその団体のウェブサイトに掲載できない」と言う公共衛生学者。そんなの知るか、掲載してもし学術誌が文句付けてきたらその時対処すればいいじゃん。さらにある学者は、出身地域ごとに分かれてローカルな運動状況を語り合うはずの時間を自分の研究のためのインタビューで潰していた。なんだかもう、性労働者に好意的な学者からしてこのレベル。
 「フェミニズム性労働」のディスカッションにも自虐のつもりで参加したのだけれど、こちらはそれよりはるかに生産的。さすがに「フェミニスト」を自称する性労働者のあいだでは、性労働を極端に美化したり逆に「女性への暴力」だと決めつけたりするのは間違いで、より慎重な理解が必要なことは共通了解となっていた様子。でも問題は、そうした理解をどうやって他のフェミニストたちと共有するかということだ。大手の団体になればなるほど何事にも「慎重な理解」などしようとはしなくなるし、米国最大規模の某女性団体の場合、毎年出る赤字をある一人のお金持ちの女性がポケットマネーで補填することでようやく存続している状態らしくて、そのお金持ち女性が強硬な「反売買春」論者であるという内実を知れば、もう全く望みはないように思う。困ったな。
 なんだか愚痴ばっかりでまとまりがないけど、長くなってしまったからおわる。苦情は双風舎の谷川さんまで(ウソ)


 おまけ話その1。泊まったホテルにはもちろんカジノが併設されていて、宿泊客には5ドル分無料でスロットマシーンが遊べる券が配られた。試しにやってみると、いきなり3ケタ(ドルで)の儲け。普通ならこれで気をよくしてスロット回し続けて破滅するんだろうなーと思いつつ、すぐやめて旅費をたてかえてくれた人に返しました。よかったよかった。
 おまけ話その2。会議中に鳴ったわたしの携帯電話の画面に表示されたのは見慣れない番号。出ると、前に女性学会とサンフランシスコの美味しいヴェトナム料理店 Sunflower に連れて行った id:kleinbottle526 くんが「macska さぁん、前教えてもらったお勧めのペンって何だったっけ?」。人が会議してるってのにぃ〜と思ったけど、携帯切っておかないわたしが悪いだけだ。ちなみにそのペンはパイロットの G-2 ゲルインキペン。わたしは常時携帯しています。

本邦初公開!『バックラッシュ!』配本ペースはいかほど?

 こんにちは、みなさま。木曜日はわれらが双風舎谷川社長の登場です。今回は『バックラッシュ!』出版以来の毎日の出荷数を教えてくれるようです。これこそ双風舎2.0。

 じめじめした梅雨も、ようやく明けそうですね。
 もうすぐ暑い夏がやってくるのですが、カンボジアに長期滞在した私は、しばしば「日本とカンボジア、どっちが暑い?」と聞かれます。暑さの質が違うので、一概には答えられません。
 同国のもっとも暑い時間帯は昼過ぎです。平均して35度くらいで、40度オーバーの日もありました。そんな暑い時間帯は、役所も民間会社も、だいたい2時間くらいの昼休みをとります。帰宅して、シャワー浴びて、飯くって、昼寝して、ふたたび出社します。
 日中、出歩いているのは、外国人観光客と外資系の会社で働いている人くらいでしょうか。私がやっていた旅行会社では、観光客にも「カンボジアでは日本人も昼寝をするもの」と説明し、かならず昼寝の時間をもうけていました。調子に乗ったら、あとの祭りです。
 暑い国ですが、多くのひとは長袖シャツを着ていたりします。焼けるような暑さに見舞われると、衣服を一枚多く着ていることの暑さよりも、一枚多く着て地肌が直射日光から遮られることのすずしさのほうが、優先されたりするのです。
 同国に滞在しているときは、年に一度のペースで帰国していました。時期は毎回、冬を選びました。成田に降り立ったときの凍えるような寒さがとても新鮮で、一度経験したら、やみつきになってしまったのです。とはいえ、同国に冬服など持っていっていないので、帰国ゲートを出てからが寒くて参りました。
 本格的に帰国して体験した、ひさびさの日本の夏(東京の夏)の第一印象は、「蒸し暑い」でした。いまの時期の蒸し暑さだけでなく、冷房の室外機と街の水分がかもしだすムンムンとした空気が、なんともいえず不快でした。さすがに4年が経過すると、そんな空気にも慣れるものですが……。


 さて、私もネタ切れの危機に陥っていることから、前フリで字数をかせぐ作戦を実行してみました。今回は、『バックラッシュ!』が日々、どの程度出荷されているのかという数字をお知らせします。
 まず、初版発行部数は5000部でした。で、6/26に4166冊ほどが、全国の書店に配本されています。以下は、6/27から昨日までの、日々の出荷数です。行数をかせぐため、日付ごとに改行します。笑


 6/27 11
 6/28 3
 6/29 39
 6/30 265
 7/01 2
 7/03 53
 7/04 80
 7/05 11
 7/06 17
 7/07 18
 7/10 33
 7/11 17
 7/12 44
 7/13 9
 7/14 58
 7/18 93
   計 753


 つまり、現在までに「初回配本4166+それ以降の出荷数753=4919冊」を出荷していることになります。これに、著者献本とメディアへの献本などの60冊がくわわり、初版分の在庫は20冊くらいになりました。まあ、初版で刷った分は一度、世に出回ったということですね。したがって明日以降は、重版2000部分を世に送り出すことになります。
 6/27以降の出荷の傾向は、お客さんが書店で注文する「客注」の数が、いつもの双風舎の本よりも断然多くなっている点です。上記のうち50冊は「客注」です。あと、首都圏外の大学生協から、平積み用に新規の注文をいただく機会も多いです。学生さんが宣伝してくれているのかもしれませんね。ありがたや、ありがたや。
 もうひとつの傾向は、初動(売り始めた直後の動き)は『限界の思考』よりもよくなかったものの、「客注」の受注傾向からいえることは、着実にじわじわと売れている様子です。まあ、ほとんど広告をうっていないのに、よく健闘していると思われます。このブログ、そして読者の皆さんに、ほんとうにお世話になっております。
 初版の配本以降、1日平均で50冊を出荷しており、そのペースがおとろえていません。これは、出版社にとっては嬉しい傾向です。今後の課題は、さらなるパブリシティー工作であり、どこかで書評などを掲載していただけないか、いろいろと画策しているところです。ちなみに『チマ・チョゴリ制服の民族誌』は、朝日新聞などを含めて、多くの書評が掲載された結果、初版の1000部がそろそろ在庫切れになりそうです。

 なるほど、これは嬉しい話です。もっとブログで宣伝して、みんなで『チマ・チョゴリ制服の民族誌』をベストセラーにしよう!(ウソ) ついでに翻訳して、カンボジア進出だ!(ウソ2.0)

過激な性教育が蔓延しているか?

 こんにちは、みなさま。今日は『バックラッシュ!』より論点「過激な性教育が蔓延しているか?」をお届けします。果たして教室でアダルトグッズは乱舞しているのか?

 バッシング派の論者により、「ジェンダーフリーの名の下に、過激な性教育が蔓延している」という批判が繰り返し行われた。性教育の実践は必ずしもジェンダーフリーの理念にもとづくものではないが、一部の論者によって両者が混同され、特に都立七尾養護学校において発達障害を持った子ども向けに現場の教師が工夫して考えた教材を、「過激な性教育が蔓延している実例」として誇張して取り上げるケースが多い(この問題に関しては、金田智之「『道徳主義型性教育』とその問題点」(木村涼子編『ジェンダー・フリー・トラブル』、二〇〇六)および、浅井春夫ほか『ジェンダーフリー性教育バッシング ここが知りたい50のQ&A』(大月書店、二〇〇三)が詳しい)。
 このような声が高まる中、二〇〇五年一二月、「義務教育諸学校における性教育の実態調査について」という報告書が発表された。この調査は自民党などから「過激な性教育が蔓延している」という指摘が多く行われたことなどを踏まえて文部科学省が行なったもので、学校総数三二四三一校(公立の小中学校、および盲・聾・養護学校)を対象に、二〇〇四年度の性教育に関する苦情や問い合わせの状況、その対応を調査したものだ。
 その結果、問い合わせ(「性教育の指導内容を教えてほしい」「性教育は家庭単独では教えづらいので、PTAや授業参観を利用し、計画的に指導していくべき」「自分の子どもに性教育は受けさせたくない」「初経指導の時期を早めてほしい」などを含む)があった学校が三六五校。苦情としてカウントできるのは一五五校で、そのうち実際に見直した例は六八校だった。一五五校という数字は学校総数三二四三一校の約 〇.四七%、六八校は約〇.二%にあたり、全体からみると「極端な例」とはいえる。この数値をみるかぎり、「蔓延」と呼べるような実態は誇張であったことがわかるだろう。
 また、見直された例の中でも、「中学校の性教育の授業において、性交について取り扱うのは行き過ぎではないか」という「苦情」に対して「扱わない」という「見直し」をしたケースなど、それらが妥当な配慮であったかは議論が必要である。
 もちろん、どのような性教育が、誰にとってどういう基準で「過激」なのかを考えることは重要だ。但し、一連の議論では、性教育の話題が単に「政争の具」として扱われているような気がしてならない。

 さて、ここでいつものようにウソネタを考えようとしたのですが、chiki さんが性教育の自習としてツンデレ喫茶を舞台としたギャルゲー『しぇいむ☆おん』をはじめてしまったので、今日はウソネタはありません。残念。(ウソ) ← クレタ

『デビューボの泉』第八回 : 正論、僕の世界観を守って!

 あなたに向けられた憎しみを微笑みへと変えてくれる『デビューボの泉』へようこそ。これまで多くの先生方にご登場いただきましたが、その先生方に貴重な紙面を提供しているのが産経新聞社+扶桑社タッグのオピニオン雑誌『正論』です。『正論』ではここ数年間、ほぼ毎月のようにデビューボな記事を掲載し続けてくださっているので、今回は全タイトルをチェックしていきたいと思います。インパクトを強調したいため、あえて「刺身」で味わっていただきましょう。なお、「chikiはこれを全部読んだんだなぁ」と呆れながら読むと、効果も倍増でオススメです。

  • 林道義構造改革論議に潜む家族破壊の罠 八代尚宏氏の“人間を忘れた経済学”を批判する」02年05月号
  • 高橋史郎「非常事態に陥った日本 自治体と教育現場で進行する文化大革命」02年08月号
  • 林道義「男女平等に隠された革命戦略 家族・道徳解体思想の背後に蠢くもの」02年08月号

 日本で改革=革命が進行している。止めねばならん! 今から『正論』がそれを暴きますぞ! というわけで、この頃から毎月のように、フェミニズム批判が展開されだします。わくわくです。

 まずは、早くもデビューボという名言が誕生します。クオリティ高いですね。なお、本文については一応macskaが言及しているのでご覧ください。

 既にお気づきのとおり、一連のネガティブキャンペーンは、基本的には「反体制」というスタンスにたっています。若い頃の血がうずくのかなんなのか分かりませんが、「!」がやたらと目立ちます。元気ですね。

  • 中川八洋「両性具有への人間改造 ジェンダー・フリー教育の正体」03年02月号
  • 高橋史郎「理想はフリーセックス・同性愛! 過激な性教育の背景を暴く」03年04月号
  • 小島新一「これは本気だぞ 男女平等教育の真の狙いは革命にあり」03年04月号

 先生方は本気です。

 先生方は政治に熱心です。

 不都合なものは、とりあえず「原理主義」とか「隠れマルクス主義」とか言っておきましょう。内容を飛ばし読みしても、フレーズだけで身体反応できる瞬発力を磨いてあげるのが大事です。

 ポルターガイストじゃ。天狗じゃ、天狗の仕業じゃ!

 敵は逃げ出したぞ。「良識」と言う名のレッテルで、追い込め追い込め。言い訳なんて、聞くものか。

 「やっぱり」がポイントです。

  • 神野吉弘「アダルトグッズ店長を招いた品川区シンポの非常識 男女別トイレは暴力?」04年05月号
  • 山口敏昭「フェミニズム条例を一掃しよう!」04年06月号
  • 山谷えり子・マークス寿子・富田和巳・川島隆太脳科学が証明した家庭教育と父性・母性の重要性」04年07月号
  • 新田均「レイプや近親相姦は当たり前!? 子供達に過激な性教育を注ぎ込んでいるのは誰か」04年07月号

 想像力が枯渇してきた論点が一通り出尽くした観があるので、色々な小ネタが登場してきました。

  • 増谷満「闘いはこれからだ! ネット言論にみるフェミニズムの横暴」04年09月号

 「フェミナチを監視する掲示板」の管理人さんも寄稿。みんなで連帯じゃ〜。

 敵は魑魅魍魎、こっちは常識。これ王道なり。

 「新しい歴史」を作って多くの人の驚きを集めた論文。さすがはヤギ染色体…じゃなかった、Y染色体説の人、視点が違う。

 論点は出尽くしたし、コネタも出尽くしたけど、もうすぐ男女共同参画基本計画が改定される時期だったので、議論をさらにもう一周させています。さすが『正論』、大人の知恵が働きまくりです。10万部売れる人気度は伊達じゃない。タイトルだけでこれほどの威力、というわけで特別に『正論』自体に92デビューボ差し上げたいと思います。おめでとうございまーす。


 さて、「デビューボの泉」も残すところあと一回となりました。次回はいよいよ、デビューボロボの発進だ!(ウソ)

小谷真理「テクハラとしてのバックラッシュ――魔女狩りの特効薬、処方します」紹介

 みなさま、こんにちは。今週は本書から、小谷真理「テクハラとしてのバックラッシュ」の一部をご紹介します。SF評論家の小谷さんらしい、とてもユニークで分かりやすいエッセイにしあげてくださいました。それではどうぞ。

バックラッシュという魔女狩り

 二一世紀に入って、正確には九・一一同時多発テロ事件以降といってもいいが、奇妙な現象が日本で起きている。一般にいうジェンダーフリー・バッシングである。一連の記事や書籍を読んでいると、ヘタクソなSFのようなシナリオが躍っている。こんな要旨だ。

「いまや男女共同参画局には、フェミニストが入り込み、いたいけな青少年に過激な性教育をほどこし、革命を起こして、家庭を崩壊させ、日本の伝統も破壊している。フェミニスト共産主義者だ」。 

 そのまま突き進めば、いつオセアニア (ジョージ・オーウェル『一九八四年』という有名なディストピアSFの全体主義世界の一部)やジオン公国(『機動戦士ガンダム』というアニメに登場する独裁国家)が飛び出してもおかしくないような論調だが、ユートピアや新人類が登場しても不自然ではない筆の勢いこそあれ、これらの記述は非現実的なSFの話ではなくて、国を憂えるノンフィクションなのだ。「SFのマネゴトをするなら、もうちょっとマジメにやれ!」と思わず苦笑してしまうところだが、これを冗談ではなく、本気にした政治家がいたという驚くべき状況があったというのだから、信じられないではないか。

 このところ、実用主義的傾向が強まった大学から役に立たないという理由で、文学部を排斥する動きが見られるけれど、本を読まなかったり、読解力不足だったりという病は、じつは政治家のなかにこそおそるべき勢いで進行していた、ということが実感される。

 とくに、これらの言説のなかで躍っている「共産主義者」という単語。これには、長年SF&ファンタジー界隈で、火星人やら超能力者や機械生命体やら、さまざまな悪役の品評会をながめてきた私の目も点になった。冷戦も解消して久しいいま、共産主義者って古すぎない? 『スターウォーズ』に登場するダース・ベイダー卿もビックリ、鋼鉄製の腰を抜かしそうな設定だ。

 これではまるで、アメリカ五〇年代に起きた赤狩りのパロディである。

 赤狩りというのは、周知のとおりマッカーシー上院議員の講演を発端にはじまったもので、共産主義者を一斉に狩りだしたマッカーシズムを指す。今日では別名、魔女狩りと呼ばれている。

 ごく最近、ジョージ・クルーニー監督が、マッカーシズムをとりあげ『グッド・ナイト&グッド・ラック』という映画を制作したから、記憶に新しいヒトもいるだろう。上院議員だったジョゼフ・マッカーシーは、とある講演のなかで政府に共産党員のブラックリストを持っていることほのめかした。これが衆目を集め、それに気をよくしたマッカーシーは以後、このネタをちらつかせながら大衆を煽って、注目を浴び、しだいに権力を手中におさめた。時はアメリカ五〇年代。ソ連との冷戦の時代である。マッカーシー鉄のカーテンの向こう側の共産主義に対する恐怖心に訴えかけ、排外主義を背景に大衆の支持をとりつけたのだ。で、どうなったか。

 さしたる証拠もないまま、密告され、共産主義者にされ、職を追われたり逮捕されたりするヒトが続出した。その拝外主義的なムードのなかで、ユダヤ人と同性愛者も巻き込まれ、同じように疎外され弾圧された。白人に根強い反ユダヤ主義と同性愛差別者が赤狩りを利用したからだ。マッカーシーと親しかったロイ・コーンという人物は、「共産主義者は同性愛者だ」というデマをとばした。通常ならば一笑にふせられるような大ウソが大まじめで語られ、偏見から造り出されたウソは独り歩きし、一種の集団ヒステリーともいえる魔女狩り現象になった。自由主義を掲げ、世界の警察を標榜するアメリカ人には、そうとうイタい過去であろう。

 大衆受けをねらってウソを捏造したマッカーシー共産主義を悪役に見立て冷戦を乗りきろうとするあまり、マッカーシズムを利用した政治家たち。それに便乗して、無責任なデマを野放しにしたメディア。無批判に信じ、魔女狩りする大衆。センセーショナリズム(扇情主義)が、テロル(恐怖)による排外主義を増幅させ、メディアも浮薄なデマを飛ばして荷担した魔女狩り。そう。マッカーシズムは、メディア社会特有の魔女狩りだったともいえる。クルーニー監督は、マッカーシーが実証性のないデマをとばしていたことを暴露したメディア関係者(ラジオ局のスタッフ)の現場を描いたのだ。もちろん、彼らもバックラッシュに遭い、自殺者も出るのだけれど。

 ……と、そんなふうに見ていくと、今回のジェンダー・フリー・バッシングも、たしかに赤狩りのできの悪いパロディのように見えてくるから不思議だ。

 …つづきは双風舎刊『バックラッシュ!』でお読みください。


 さて、『バックラッシュ!』発売記念キャンペーンも終盤に入っていますが、当ブログでは将来を見据えて『バックラッシュ!』続編に関するアンケートをやっています。あなたの一言が双風舎を突き動かすかもしれません! アンケートに回答してくださった方にはもれなく5ドギ進呈しているのでご協力ください。ドギと言えば、続編が出ればまた誤植が大量に見つかってドギを稼げるチャンスがあるかも!(ウソ)